シキミ
科名
シキミ(マツブサ)科
学名
Illicium anisatum
別名
ハナノキ コウノキ
原産地
日本 中国
大きさ
2m~5m
主な開花期
3月~4月
耐寒性
ややよわい
難易度
★★☆☆☆(そだてやすい)

こんな植物です

中国や本州の関東より西、四国、九州、沖縄など比較的暖かい地域の山地に見られる広葉常緑樹で、育つと樹高は5mほどになる小高木です。以前はモクレン科でしたが、今は独立したシキミ科に分類されます。 3月~4月にかけて径3cmくらいのクリーム色の花を多数咲かせます。葉は深い緑色で革質、光沢があり美しいです。 『樒の花』は晩春の季語です。

熟した果実は星のような形をしており中華料理に良く用いられる「八角」(同じシキミ科の樹木トウシキミの果実)とそっくりですが猛毒で決して口にしてはいけません。主な成分は神経毒のアニサチンで、中毒症状は全身けいれん、おう吐、意識障害などです。

また、シキミからはじめて発見されたシキミ酸は、インフルエンザ治療薬「タミフル」の原材料として知られます。ただし、シキミ酸に薬効があるわけではなく、複雑な化学合成によって精製され薬となります。原材料のシキミ酸もシキミ以外のものから採っているようです。

用途・由来

樹皮や葉は乾燥させて粉にして抹香として用いられます。そのほか枝葉は仏壇に添えられたり、葉が末期の水をとるのに用いられたり、仏事と関連の深い樹木です。そういう兼ね合いからなのかわかりませんが庭木以外にお寺に植えられているものも見ます。

果実だけではなく全木に毒をもっている有毒植物ですが、特に果実の毒性が強く「悪しき実」が転じてシキミと言う名前になったとも言われています。他にも季節に関係なく芽を出すので「四季芽」からシキミになったとか、やや平べったい形をした実の形から「敷き実」に由来するなど諸説があります。

属名のイリキウムはラテン語のイリキウム(誘惑)に由来し、「芳香に誘われる」という意味のようですが詳細は不明です。


種類

〔〕内は学名、I.はIlliciumの略。

変種に薄紅色の花を咲かせるウスベニベニシキミ〔var. roseum〕や沖縄原産で葉の細長いオキナワシキミ〔var. masaogatae〕などがあります。葉に淡い黄色の斑が入るフイリシキミも知られています。

近縁種に中国原産で乾燥させた果実が香辛料になるトウシキミ〔I. verum〕があります。

育て方

栽培カレンダー

栽培カレンダー

主な作業の適期

植え付け 4月中~5月中 / 9月下~10月中
剪定 1月~2月 / 6月中~7月

日常の手入れ

剪定

樹形はさほど乱れずまとまるので形を整えるための剪定をする必要はあまりありません。混みあって風通しが悪くなっている場合は重なり合っている枝を切り落として樹の内部まで風と日射しが入るようにする「透かし剪定」を行います。花芽は前年伸びた枝の葉の付け根にできます。

剪定の適期は6月中旬~7月、もしくは冬の1月~2月頃ですが、春に芽吹いて伸びた枝がしっかりと固くなる6月中旬以降でしたらあまり時期を選ばず剪定できます。芽吹く力や枝葉を伸ばす力が強く、太い枝を切ってもよく芽を出すので刈り込むこともできます。

日当たり・置き場所

西日を避けた明るい日陰で良く育ちます。日射しが強いところでは乾燥が激しく葉色が悪くなり生長もあまり良くありません。

かかりやすい病害虫

あまり見られませんが、夏の初めからハマキムシが発生することがあります。ハマキムシは葉をつづり合わせたり巻き込んでその中で生活します。見つけ次第、葉ごと取り除いて駆除します。

植え付けと用土

植え付けの適期は充分暖かくなってからがよく、4月中旬~5月中旬もしくは9月下旬から10月中旬が適期です。もともと暖かい地域に自生する樹木なので、寒冷地での植栽は適しません。

水はけが良く、腐葉土や堆肥のたっぷり入った腐植質に富む肥えた土が適しています。

ふやし方

さし木とタネからふやすことができます。

さし木の適期は若い枝がしっかり固くなった6月下旬~7月が適期です。本年春に伸びた若い枝を15cm前後に切り取って土に挿します。用土は特に選ばず川砂、赤玉土、鹿沼土などを使います。さし木1年目はあまり生長しませんが、2年目以降は勢いよく生長をはじめます。

タネは秋に熟した果実から取り出してすぐにまくか、翌春にまきます。

その他の画像

1.若い果実 2.熟した果実 3.トウシキミの果実(市販品)4.フイリシキミ

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