ヤサシイエンゲイ

江戸時代に一旦失われた古典植物

マツモトセンノウ

マツモトセンノウ
科名:ナデシコ科
学名:Lychnis sieboldii
原産地:いろんな説がある
主な開花期:6月-8月
草丈:30cm~70cm
栽培難易度:バー バー バー バー バー
(ふつう)

マツモトセンノウとは

起源がはっきりしない

毎年花を咲かせる多年草で、夏の山野草として扱われます。原産地があまりはっきりしない植物で、起源には諸説あります。ここではよく知られる3つの起源を説明します。

1つめは、かつて長野県の松本地域に自生していた説、2つめは阿蘇山に分布するツクシセンノウが元となっている説(マツモトセンノウとツクシセンノウは同種という解釈もあります)。3つめは中国の華北地域や朝鮮半島で同一と見られる種が自生しており、そこを原産地とする大陸起源説です。

草姿

草丈は30cm~70cmで、株元からたくさんの茎を出しますが基本的に枝分かれはしません。葉っぱは先端の尖ったタマゴ型で、花色の濃い株ほど赤褐色を帯びた濃緑色になります。花色の薄い株はその逆になり、白花の株は緑色葉です。主な開花期は初夏~夏で、茎の上の方の節から径4cmほどの花を咲かせます。花色は赤が基本で、白、オレンジ、ピンク、絞りなどが知られています。

茎の地中部分に芽が付き、翌春にはこれが伸びて新たな茎になります。大株になると株元は塊状になります。株元に近い部分の根っこは太短くて水分がたっぷり含まれた多汁質で折れやすく、末端に長い細根がでます。

由来

名前の由来は長野県松本に分布していたから、松本幸四郎の定紋「四つ花菱」に似ているからなど諸説あります。センノウはナデシコ科センノウ(リクニス)属の総称です。

歴史

江戸時代にはたくさんの品種が作られましたが明治に入るまでにそれらはすべて失われています。「いろは…」の各頭文字を付けた品種が紹介されている文献(地錦抄附録:1773年)もあり、少なくとも48種(いろは…は全部で48文字)はあったと思われます。

野生種は不明、古い品種は絶滅していますが、現在でも栽培品は普通に見ることができます。これは戦後に吉江清朗さんが長野県伊那谷の山中において、廃屋の石垣に自生しているものを発見、それを育種してくれたからです。現在のマツモトセンノウはこれが主体となっています。

現在あるもので名前の付いた品種は少ないですが、紅色花が茎の頂点にまとまって咲き、花軸が短い`深志`や白花優良種の’白雪姫’などがあります。

育て方

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
開花
          バー バー バー        
植え替え
  バー バー                
肥料
    バー バー       バー      

生育環境
日当たりが良い場所より、やや日陰で風通しのよい場所が適しています。特に真夏は気温が高い上に土がひどく乾燥しやすいので、直射日光は避けるようにしましょう。耐寒性はあるので冬の防寒対策は特に必要ありません。

手入れ
摘心(5月~6月)
茎がある程度伸びてきたら、5月~6月頃に先端の芽を切り落としてしまいます(摘心)。摘心すると複数の芽が出てきて茎の数が増えて花がたくさん咲きやすくなる、茎が伸びきる前に花を咲かせるので茎が倒れにくくなる、などのメリットがあります。栽培上、絶対必要ではありませんが、よりキレイに花を楽しむためにやりたい作業です。茎を長めに切り落としたら、それをそのままさし木に利用することもできます。

支柱立て
株がまだ小さいうちは、茎が細くて倒れやすいので支柱を立てます。

用土
適湿を保て、なおかつ水はけがよければ、あまり土質は選びません。鉢植えにするなら、赤玉土4:砂礫系の土(日向土など)4:腐葉土2で混ぜた土などが適してます。山野草の培養土で応用が利きます。

植え替え
植え替え・植え付けの適期は春に生長を始める前、3月~4月が適期です。根の生育が旺盛なので、鉢植えは1~2年に1回植え替えた方がよいでしょう。

地植えでは3~4年経つと株が大きくなって、芽の出る部分が地表に上がってくるので数年に1回は植え替える必要があります。芽の出る部分がしっかりと地中に埋まるようにします。

水やり・肥料
やや湿り気のある土壌を好み、乾燥は嫌います。鉢植えは鉢の表面が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。気温の高い時期は特に乾きやすいので注意します。水切れをさせてしまうと、どうしてもその後の生育が悪くなってしまいます。

肥料は春に芽が出てきた頃、ゆっくりと効く固形肥料を適量与えます。同時に花が咲くまでの間数回、液体肥料を与えます。そして暑さが過ぎた9月以降にも春と同じ固形肥料を適量与えます。春の肥料は茎葉を元気に生長させて花を咲かせるため、秋の肥料は冬の休眠に入るまでに充実した元気な株にして翌年に備えるためのものです。さほどたくさんの肥料は要りませんが、生長の状況に応じてちゃんと与えるようにしましょう。

ふやし方
さし木と株分けで増やすことができます。

さし木の適期は5月から6月で、茎を2節の長さに切り取って土にしっかりと挿します。比較的根付きやすく、上手くいくとその年から花を見ることができます。

株分けは植え替えと同時に行います。タネは乾燥させると発芽力が落ちるので、採取してすぐにまきます。

関連するページ
ナデシコ科
山野草